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よりエコに、サステナブルに変わるパリの街

地球に人に、優しくなった、パリの交通手段


1日平均1, 200万人もの人を運ぶメトロ。そのメトロで今、乗客に気が付かれないほどさりげなく、でも実は大規模なエコ化が進められているという。メトロを運営するRATPに取材をした。

現在進行中のエコ化とは、メトロとRATP管轄の高速郊外鉄道RERの全駅、合計368駅の照明すべてをLEDに切り替えるというもの。完了するとエネルギー使用量は現在の半分に。CO2排出量は年間1,600トン削減できる計算になる。

LED化が完了しているCensier-Daubentonの駅構内

プロジェクトの鍵は、言うまでもなく26.5万個も使用するLEDの品質。でも、品質に加えてこだわったのが、きちんと環境や社会に配慮した会社から、LEDを調達すること。だからLED梱包材への環境配慮にはじまり、障がい者雇用、男女雇用の平等性、さらには下請け会社など取引先の労働環境までもが審査の対象。厳密に調査し、品質面も会社としての姿勢も、本当に信頼できる2社に絞り込んだ。検証・審査を経て、いくつかの駅では既にLED化が完了している。

ただ乗客の9割は、照明の変化に気が付いていないらしい。せっかく取り換えたのに、乗客の反応がほとんどないのはちょっと寂しい気もしたが、担当者の一人、グレゴリーさんによると、実はこれも作戦通り。

(左)ジル・リーメンシュナイダーさん。LED化プロジェクトの発案者。社内では、環境活動の第一人者的存在。空港など他社からRATPの取り組みについて聞かれたり、相談を受けることもある。
(右)グレゴリー・ロアールさん。父親も鉄道関連の仕事をしていて、その姿に憧れて今の仕事に就いた。「子ども達に夢を与えて、親しんでもらう活動は大切だと思います」。

「明るければ明るいほど良いという時代ではないし、いかにもLEDな青い光にはしたくなかった。事務所でもLED化を進めていますが、変化に気が付いていない同僚もいますよ。『まだLED化してないの?』と聞かれ、『もう変えてあるよ!』と返すのがおもしろくって!」。

環境、社会への配慮は、LED化に限らずRATPの活動全体に浸透している。例えば、現在建て替え中の車両整備場には、市民に身近な企業でありたいとの考えから、公立の中学校と幼稚園も入る予定だ。建物のデザインは、300年、400年先も愛される建造物をテーマに一般公募し、古い整備場を取り壊す際には壁をアーティストに開放して自由に絵を描いてもらうなどもした。また従業員の労働環境に配慮して、地下の整備場まで太陽光が届く設計になっているという。

「『鉄道会社は鉄道のことだけ考えていれば良い』ということではなく、もっと広い視点で環境や社会について考えること、子ども達に夢を与えるような活動も大切だと考えています」。

新整備場は2015年完成、LED化は2017年完了の予定だ。

1900年のパリ万博に合わせて開通したメトロ。Abbesses駅には、開通当時、建築家エクトール・ギマールによって設計された優美な入口が今も残る。歴史的建造物を重んじるパリとはいえ、1世紀以上前の入口が残っている駅はさすがに少ない

Vélib'(ヴェリブ)に乗って、エコ&ヘルシーに街散策

渋滞緩和とCO2排出量削減を目的に、パリ市が運営しているレンタル自転車「ヴェリブ」。街中に設けられたパーキングなら、どこから乗ってどこで返却してもOK。30分以内に返却すれば基本使用料1ユーロのみ。 取材で訪れた1月のパリでも、寒さに負けずヴェリブを乗りこなすパリジェンヌを発見! 手続きは観光客にもわかりやすいので、パリ散策に活用してみては?