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共感を呼ぶ、行動につなげる「サステナブル・ストーリーテリング」

自社の「ストーリー」を掘り起こす


では、自社で「サステナブル・ストーリーテリング」を展開するためにはどうしたら良いのだろう。相手に行動したいと思わせるようなストーリーの作り方とは?

「ストーリーは、自社のことを良く知る社内の人が自分達の言葉で思いを伝えるものであり、共感を呼ぶものでなければなりません。また見せかけのストーリーは、すぐに見破られてしまいます。自社がCSRに取り組む意義、原点と改めて向き合い、CSR部が中心となって、企業姿勢を示すストーリーを構築するほかないのです」

ただ日本企業の場合、特に環境分野では、CSRに取り組む原点が法律遵守・公害対応というケースも少なくない。あるいはコスト削減など、ネガティブな要因の場合もあるだろう。そうした場合でも、有効なストーリーは作り得るのか。

「法律遵守がきっかけであっても、その法律ができた背景には、気候変動などの地球規模の課題があるはず。自社の取り組みがどのように地球規模や地域の課題を解決することに役立っているのか改めて考えると、なぜ企業として取り組んでいるのかがより明確となります。そのストーリーが共感を呼ぶものであれば、社内外での理解が増え、さらに一歩進んだ活動となります。また、他社やNGOとの協調行動を起こすことにもつながるかもしれません。コスト削減についても、例えば、エネルギー消費の削減を徹底して行うことで、二酸化炭素の排出量の抑制につながり、また水使用の削減では、海外での水不足、特にサプライチェーン上では現状でも顧慮が必要であること、また今後迎えるかもしれない水資源の枯渇への啓蒙につながるとともに、将来に備えることができます。こうした原点、精神まで遡れば、共感を呼ぶ、有効なストーリーを構築できると思います」

下田屋氏は、「サステナブル・ストーリーテリング」の可能性について、こうまとめる。

「一部の先進企業を除いて、CSRは、企業のメインストリームには位置付けられていない状態があると思います。そのために、他部門からも協力が得にくく、企業全体で推進することが難しくなっています。でも、サステナブル・ストーリーテリングで、企業のトップ・経営層の理解を得て、社内の他部門の従業員を巻き込むことができれば、CSRはマーケティング戦略とも結びつき、顧客や株主、NGOなどの社外のステークホルダーをも巻き込むことができる。『サステナブル・ストーリーテリング』は、CSRと企業戦略を結び付け、CSRを企業のメインストリームに置くことをも可能にするツールだと考えています」

現状打破の鍵と成り得る「サステナブル・ストーリーテリング」。CSRの原点を改めて振り返り、自社のストーリーを掘り起こしてみてはいかがだろうか。

お話を伺った方

Sustainavision Ltd. 代表取締役 下田屋 毅氏

イギリス・ロンドン在住/CSRコンサルタント/ビジネス・ブレークスルー大学講師(担当:CSR)/国際交流基金ロンドンCSRセミナーシリーズ2011/2012プロジェクトアドバイザー
1991年大手重工メーカー入社、工場管理部にて人事・総務・採用・教育・労使交渉・労働安全衛生等を担当。労働安全衛生主担当として、「安全衛生管理要綱」作成、「安全内部監査制度」を企画・導入。2002年環境ビジネス(R.P.F.製造)新規事業会社立上げに参画、その後2007年7月渡英。英国イースト・アングリア大学環境科学修士、英国ランカスター大学MBAを修了。日本と欧州とのCSRの懸け橋となるべくSustainavision Ltd.を2010年英国ロンドンに設立。英国IEMA認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー資格講習を2012年より日本にて定期開催。 Sustainavision Ltd. Webサイト