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共感を呼ぶ、行動につなげる「サステナブル・ストーリーテリング」

世界銀行を動かした「ザンビアのマラリア治療法」のストーリー


ビジネス界でストーリーテリングが注目されたのは、世界銀行のスティーブ・デニング氏がきっかけだった。

「1990年代、世界銀行の主な業務は、途上国への融資や資金提供によるプロジェクトの遂行で、銀行内に蓄積された途上国支援のナレッジをシェアする仕組みは存在していませんでした。そうした状況の中、IT技術を用いたナレッジシェアリング構築を提案したのが、デニング氏です。しかし当時はまだ、ITの重要性が認識されていない時代。彼の提案を真剣に受けとめる人は誰もいませんでした。そこで、人々を説得するために彼が用いたのが、『ザンビアのマラリア治療法についてのストーリー』です」

ザンビアのマラリア治療法についてのストーリー

ザンビアの首都・ルサカから約600キロ離れた小さな村。その村の医療所で働くスタッフは、マラリアが蔓延する中、治療法が分からず途方に暮れていた。1995年当時、既に治療法は解明されていたのだが、都心から遠く離れたその医療所には、情報が行き渡っていなかったのだ。物理的に他の医療所を訪ねるのは不可能。何とか治療法を見出そうとインターネットを使用したところ、ついに治療法を入手できたのは、アメリカ・アトランタの疾病対策センターが運営する情報データベースだった。
世界銀行は、マラリアの治療法はもちろん、相当量のナレッジを蓄積している。それにも関わらず、ナレッジをシェアする仕組みがないために、困窮する医療所に対して何もすることができなかったのだ。

デニング氏が語ったこのストーリーは、通常のプレゼンテーションでは聞く耳を持たなかった世界銀行の上層部の共感を呼び、ナレッジシェアリング構築への大きな原動力となった。現在、世界銀行のWebサイトには、膨大な情報、ナレッジが蓄積されており、世界中からアクセスすることができる。

「官僚的で巨大な組織である世界銀行でさえ、印象的な一つのストーリーで、変革を起こすことができたのです。