CSRを社内外に浸透させる手法として、欧米を中心に「サステナブル・ストーリーテリング」が注目を集めています。社内変革を起こし、多くのステークホルダーを巻き込む鍵とも成り得る「サステナブル・ストーリーテリング」とは? イギリス・ロンドン在住のCSRコンサルタント、下田屋毅さんにインタビューをしました。(2014/09/10更新)
CSR活動を推進する上で、活動内容そのものと並んで重要な鍵となるのが、CSRの概念や活動を、いかに社内外のステークホルダーに浸透させるかだ。元来、CSRの根底にあるのは地球規模のリスクへのアプローチであり、一企業、ましてCSR部だけで解決できるものではない。ステークホルダーの理解・協力の下、包括的に取り組んでいくことが不可欠だ。しかし実際はどうだろうか。社内でさえ、担当部署以外では未だ「CSR=社会貢献」という理解が根強く、CSRはビジネスの本流とは別次元のところに置かれているケースが少なくない。そうした状況の中、CSRを社内外に浸透させる方法として、今、欧米を中心に注目を集めているのが「サステナブル・ストーリーテリング」だ。
ただ「ストーリーテリング」自体は、新しい手法というわけではない。古くはキリストの教えを説いた聖書、様々な教訓を盛り込んだ童話も、人々が理解しやすいようにストーリー(物語)を用いて伝えるという意味で、ストーリーテリングだ。
「ストーリーテリングとは、伝えたい内容を、具体的なエピソードや、背景も含めた物語(ストーリー)の形で、聞き手(読み手)により分かりやすく、より印象的に伝える手法です」(下田屋氏。以下同様)
ビジネスの場で何かを伝える手法として、一般的に用いられるのは、プレゼンテーションだ。プレゼンテーションが、象徴的なデータや数字、端的な言葉で、伝えたいことを簡潔に見せるのに対して、ストーリーテリングでは、物語で相手を引き込む。
「物語性があることで、機械的な数字やデータよりも、人の記憶に残りやすく、共感も得やすくなる。その結果、情報を伝えるだけに留まらず、『自分も取り組みたい』という、衝動や実際の行動にも、結びつきやすくなるのです」
こうしたストーリーテリングのビジネスにおける効果は、米紙「ハーバード・ビジネス・レビュー」などでも取り上げられ、高く評価されている。