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空飛ぶバスが生まれるバラ色の街

フランスの一都市ではなく世界とつながるグローバルシティへ


エアバスの社員をはじめ、トゥールーズで航空宇宙産業に携わる人の数は、10万人を超える。トゥールーズの人口は約44万人(都市圏人口としては約92万人)だから、その存在の大きさはいうまでもない。

エアバスは今、世界で活躍し、しかも航空業界をリードできる優秀な人材を確保するため、国境にとらわれず世界中から人材を集めている。その象徴が「Fly your ideas」。世界の大学生を対象に、未来の航空輸送を描く斬新なアイディアを求めるコンテストだ。優秀な学生、特にエンジニア候補の学生を、早いうちから発掘するという狙いがある。
場合によっては、高校生をスカウトすることもあるし、2年に一度開催される見本市(パリ国際航空宇宙ショー)も優秀な人材と出会える雇用の機会として活用している。

「このトゥールーズ本社で働くスタッフは、100カ国以上から集まってきています。英語さえ使えれば、国籍も性別も関係ありません。優秀なエンジニアを採用するためには、世界に目を向けなければならない」。そう語る海外雇用を担当するラシェル・シュレーダーさん自身、出身地はアメリカ。そういえば、エアバスの敷地内に入る際に通った受付にいたのは、イタリア出身だという陽気な男性だった。

左から、メディア部門の責任者アン・ガラベールさん、フランス国内の雇用部門の責任者セブリンヌ・カチ さん、海外雇用を担当するラシェル・シュレーダーさん。それにしても、今回の取材で話をしてくれた人は皆、魅力的な女性ぞろい。偶然かと尋ねると「ほかの企業と同じように、エアバスでも女性の活躍推進に力を入れています。特に広報・人事分野は女性の比率が高いですね」とのこと。

エアバスが世界から人を集めれば、それはすなわちトゥールーズの住民が国際化していくことにつながる。さらに、エアバスは人を集めるだけでなく、世界に人を派遣してもいることを、エアバス財団のアンドレア・ドゥバネさんが教えてくれた。
「毎年、インドで農村地域の土壌改良を中心とした環境活動を行っていますが、この活動には視野を広げるための人材教育としての機能もあります。30名ほど社員の参加を募りますが、いつも500名以上の応募があります」。
普段生活している社会とは環境も価値観・考え方も異なる社会へ実際に赴き、身を以て世界の多様性を知ることで、視野が広くなりグローバルに活躍できる人材として成長できるのだという。

エアバス財団のアンドレア・ドゥバネさん。エアバス財団は、人道支援、環境保護、貧困地域の支援などに取り組んでいる。航空機メーカーだからこそできる社会貢献活動に力を入れており、テストフライトを兼ねた貧困地域や災害被災地への支援物資輸送を行っているほか、貧困地域の子どもたちを対象に、航空機や有名人と出会うことで夢と自信を持ってもらう活動も。次世代育成に力を入れるエアバスらしい活動だ。

環境活動を行う場所をインドにした理由は、そこに次世代へ残すべき豊かな自然が、特に貴重な生物の多様性があるため。自然を保存しつつ農村社会も栄える調和のとれた発展の実現を目指している。そしてもうひとつ、エアバスの事業戦略面からの理由もある。インドを、次世代の有望なマーケットと捉えているのだ。将来的な顧客でありパートナー候補となる人々との関係を今から深めつつ、地球環境も守っていく。エアバスの活動は、さまざまな側面でエアバス自身にとっても地球全体にとってもプラスになるよう考えられている。

トゥールーズは、今や世界の空をつなぐ道具を生み出しているだけの場所ではない。そこにいる人、彼らが持つ技術や情報こそが、世界とダイレクトにつながっている。グローバルレベルで確かな地位を築く街なのだ。

トゥールーズを航空宇宙産業の街としてさらに進化させる施設が、エアバスの工場の隣に建設中だ。エアバスを含む複数の企業と行政が関わる共同プロジェクト、航空産業博物館「アエロスコピア(Aéroscopia)」 アエロスコピアは現在、オープンに向けて、展示するための航空機が集められており、建設予定地には古いプロペラ機から伝説の音速旅客機コンコルドまで、マニアには垂涎もののラインナップが並んでいる トゥールーズ市内にエアバス財団が設置したエコパーク。環境保護活動と地域貢献の一環として、市内の緑化を推進している。建設時には、トゥールーズの若者たちにも工事に参加してもらった。同様のエコパークを、イギリス、スペイン、ドイツ、アメリカ、中国などの拠点地域に設置する予定