トゥールーズの空の玄関口ブラニャック空港の周囲には、エアバスの関連施設が並んでいる。その中でも、ひときわ大きく真新しい工場が、エアバスが最先端の素材、技術、システムを投入して開発している次期主力中型機A350XWBの最終組み立て工場だ。
2012年10月に稼働を開始したこの工場の特徴は、徹底した環境配慮。巨大な工場でありながら、周辺環境への影響は徹底的に排除され、むしろ省エネルギー技術の見本ともいえるほどの環境技術がつまっている。
工場に入ってまず驚くのは、明るさだ。航空機が何機も入る巨大な工場の内部は、密閉された広大な空間にもかかわらず、すみずみまで自然光のやわらかい光が満ちている。日中なら屋外と遜色ないほどの明るさだ。工場の設計段階で、自然光を採り入れやすい角度を綿密に計算し建物をL字型にしたのだという。天井にも壁面にも可能な限りガラス窓を設置し、ガラス自体も自然光の明るさをそのまま通せる特製品だ。工場の建設時には、古い建物のコンクリートや土台をリサイクルし再利用している。
さらに、工場の屋根に設置した約2,2000平方メートルのソーラーパネルによる発電で、工場の使用電力の55%を賄っている。ソーラーパネル自体は日本でも珍しくなくなったが、これだけの巨大工場で半分以上となると、さすがに驚く。
トゥールーズが工業都市でありながら「住みたい街」としての人気を保つ理由が、この工場からもわかる。最先端の工業都市は、最先端の環境都市にも通じるのだ。
工場内を案内してくれたA350XWB プロダクトマーケティングマネージャーのエマニュエル・アイガさん。
「この工場や、隣にあるA380(世界初の総2 階建て旅客機)の組み立て工場には、連日たくさんの見学者がいらっしゃいます。近隣住民の方々や、子どもや家族連れ、航空機が好きな方々などさまざまですが、特に多いのがトゥールーズで航空関連の分野を学ぶ学生たち。彼らの質問はマニアックなものが多く、こちらも楽しめます」。