• Home
  • 空飛ぶバスが生まれるバラ色の街 [3]

空飛ぶバスが生まれるバラ色の街

最新旅客機が生まれる場所エアバスの最終組み立て工場


トゥールーズの空の玄関口ブラニャック空港の周囲には、エアバスの関連施設が並んでいる。その中でも、ひときわ大きく真新しい工場が、エアバスが最先端の素材、技術、システムを投入して開発している次期主力中型機A350XWBの最終組み立て工場だ。

2012年10月に稼働を開始したこの工場の特徴は、徹底した環境配慮。巨大な工場でありながら、周辺環境への影響は徹底的に排除され、むしろ省エネルギー技術の見本ともいえるほどの環境技術がつまっている。

工場に入ってまず驚くのは、明るさだ。航空機が何機も入る巨大な工場の内部は、密閉された広大な空間にもかかわらず、すみずみまで自然光のやわらかい光が満ちている。日中なら屋外と遜色ないほどの明るさだ。工場の設計段階で、自然光を採り入れやすい角度を綿密に計算し建物をL字型にしたのだという。天井にも壁面にも可能な限りガラス窓を設置し、ガラス自体も自然光の明るさをそのまま通せる特製品だ。工場の建設時には、古い建物のコンクリートや土台をリサイクルし再利用している。

さらに、工場の屋根に設置した約2,2000平方メートルのソーラーパネルによる発電で、工場の使用電力の55%を賄っている。ソーラーパネル自体は日本でも珍しくなくなったが、これだけの巨大工場で半分以上となると、さすがに驚く。

トゥールーズが工業都市でありながら「住みたい街」としての人気を保つ理由が、この工場からもわかる。最先端の工業都市は、最先端の環境都市にも通じるのだ。

工場内を案内してくれたA350XWB プロダクトマーケティングマネージャーのエマニュエル・アイガさん。
「この工場や、隣にあるA380(世界初の総2 階建て旅客機)の組み立て工場には、連日たくさんの見学者がいらっしゃいます。近隣住民の方々や、子どもや家族連れ、航空機が好きな方々などさまざまですが、特に多いのがトゥールーズで航空関連の分野を学ぶ学生たち。彼らの質問はマニアックなものが多く、こちらも楽しめます」。

組み立て中のA350XWB。現在、開発テスト用の5機を製造している。完成前にもかかわらず、既に582機の発注を受けている(2013年1月)。ちなみにXWBは、eXtra Wide Bodyの略。胴体部分が太くなっており搭乗できる乗客の数を増やしている エアバスの航空機は、スペイン、イギリス、ドイツ、中国にある各工場で翼、胴体、エンジンなどのパーツごとに製造している。パーツをこのトゥールーズに集めて、最終の組み立てを行う。A350XWBの組み立て期間は8〜10週間で、ほかの航空機よりも短期間でできる エアバスは環境配慮以外にも社会貢献に取り組んでおり、工場内で働くスタッフが着ている作業着の洗濯は、障がい者が働くアトリエに委託している。さらに洗濯に雨水を使う徹底ぶり エアバスは環境配慮以外にも社会貢献に取り組んでおり、工場内で働くスタッフが着ている作業着の洗濯は、障がい者が働くアトリエに委託している。さらに洗濯に雨水を使う徹底ぶり トゥールーズの空では、ほかでは目にできない珍しい航空機を見ることができる。「ベルーガ」の愛称で呼ばれる貨物機は、エアバスが欧州各地の工場から部品を空輸するために使用する専用機。可愛らしい見た目とは裏腹に、大型の機体部品も運べる抜群の輸送力を持つ