ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)の進捗は、主にWebサイト、サマリー版のレポート、統合報告書で情報発信している。自社媒体に加えて、イギリスのメディアGuardianなど、外部団体とも積極的に提携。様々な機会、ツールを駆使して情報を発信しているが、これらのターゲットは、一般消費者ではなく、投資家やNGO、専門家だという。
消費者に対する情報発信、エンゲージメントはどのように進めているのだろう?
消費者に対しては、ブランド、製品を通じたアプローチを展開している。つまり、ユニリーバという企業名ではなく、消費者にとって親しみやすい、目に見える製品でコミュニケーションをする、ということだ。そのような消費者とのコミュニケーション例として、肌の乾燥を和らげるスキンケア製品、Vaselineがある。
2015年6月、ユニリーバは、国際的なNGO、Direct Reliefと協働で、「Vaseline(R) Healing Project」を立ち上げた。これは、ヨルダンに避難しているシリア難民などに、皮膚の治療、医療用品、そしてVaselineの製品と医療スタッフへの教育を提供しようというプロジェクトだ。難民の多くは、裸足で逃げて来たために足裏が深くひび割れていたり、極度な乾燥により肌を痛めているという。また十分な治療ができないために症状が悪化し、通勤、通学ができなくなるなど、基本的な生活にまで影響を及ぼすケースが少なくない。
このような状況にある人々に、Vaselineを使ってもらい、症状の改善を図ることは、一般消費者にも製品の有用性を効果的に伝えることにつながっていく。そして興味をもった人が、今度はWebサイトにアクセスし、さらに理解を深めてくれるかもしれない。最近は、Facebookの製品ブランドのページでも、製品の基本的な情報に加えて、その背景にあるストーリーが発信されている。
このように、各ステークホルダーに適した方法で情報を発信していくことが、エンゲージメント強化、企業の成長につながっていく―― その理論自体は、よく耳にするが、ユニリーバの場合、それは理想などではなく、圧倒的な数字として現れている(→詳細はこちら)。
ランク外からおよそ10年で、“サステナビリティ業界の巨人”となったユニリーバ。
その背景には、会社の構造から、経営者・従業員のマインド、そして株主構成まで、ビジネスを取り巻くあらゆる要素を、短期志向から長期志向へと、シフトさせたストーリーがあった。ユニリーバの成功は、他社や業界全体へ明確な影響を及ぼしている。今後も、ユニリーバを追随し、サステナブルな方向へ本気で梶を切ろうという企業が、ますます現れていくだろう。