ユニリーバへの取材レポート第二弾。躍進を支える社内体制、そして社内外のエンゲージメントへの取り組みについて、紹介します。(2016/10/14更新)
会社全体をサステナビリティの方向へ牽引していくうえで、やはりCEOや経営層のリードは欠かせない。ユニリーバの場合、CEOのポール・ポールマン氏が最大の活動推進者であることはいうまでもなく、主要な取締役の業績評価の目標には、サステナビリティに関する指標が組み込まれているという。
投資家に対しても、短期的な業績向上に過度にとらわれず、長期的な視点から持続可能な成長を実現していくために、四半期決算報告を廃止。過剰消費が世界を苦しめているという現実、そして従来の資本主義に台頭する新しいモデルへの転換が求められていることを訴求し、短期志向の投資家から長期投資家へ、株主構成のシフトを図っている。
こうしたトップの本気の姿勢は、従業員の意識も変えていく。過去には、ある部門の最高責任者が現場を訪れ、必要なものを見極めた結果、これまでの仕組みが一新された例もあったという。
そのほか、従業員に対しては、日常業務の中にサステナビリティを推進するツールとシステムが組み込まれており、職域や国によって内容をアレンジした各種研修も実施している。
従業員に対してはもちろん、経営層やCEOに対しても、適宜、具体的に働きかけていくのが、サステナビリティチームだ。
サステナビリティチームでは、世界の動向や、消費者を取り囲むさまざまな要件を踏まえて、進むべき方向などを検討し、会社の経営層に提案を行っている。例えば、サステナビリティの有用性を裏付けるリサーチとして、消費者をサステナビリティに考慮した商品への関心度で4段階に分類し、消費習慣の特徴について、調査も行っているという。
特に、CEOのポール・ポールマン氏に対しては、消費者リサーチに基づく提案のほか、全製品のカテゴリーについて、それぞれのカテゴリーに具体的にどう落とし込んでいくかなども提案し、議論を重ねている。
サステナビリティチームのスタッフは、発展途上国におけるBOPビジネスなどで、現地に赴くこともある。地域のニーズに応え、社会課題の解決に貢献する製品を開発するには、サステナビリティチームと、現地のマーケティングチームの協働が不可欠だからだ。現地の文化や風習も考慮しながら、アイディアを出し合い、時には複数の部門と間接的に協働しながら、製品開発を進めている。
例えばインドでは、製品使用時の様子をモニタリングし、検証することで、製品使用時の水の量を劇的に削減することに成功した。また製品開発後や、プログラム導入後も、計画通りに展開できているか、確認する作業も行っている。