“Seminare su quelle colline” その丘に種を蒔く
Colline verdi ~緑の丘 暑い夏がようやく去り、朝の青空は高い。琵琶湖から吹いてくるのか涼風がさわやかだった。入り口の小道を抜けると緑の世界が広がっていて、低い笹の植栽が一面に続く先に、屋根まで植物に覆われた […]
2026年2月9日そこに楽園があると聞き、パリ市内から車で1時間ほどの城跡を目指す。景色は郊外の風景に変わり、やがて緑の方が多くなってくる。その楽園は名をLa Source Garouste -Villarceaux(ラ・スース・ガルースト・ヴィラルソー)といい、アートと社会の交差点にあるという。モネが晩年に住み、庭にうつろう睡蓮の姿を描き続けたジヴェルニーの近く、ヴァル=ドワーズ県にあるヴィラルソー領に位置している。そこはアーティストの魂を呼ぶ場所なのだろうか。


ラ・スース・ガルースト・ヴィラルソーは、小さな街の外れから、さらに少し先、広く美しい庭の中にある。16世紀の城跡でヴァル=ドワーズ県評議会と提携運営されている施設だ。
大通りから折れ、樹木塀で仕切られただけの駐車場に車を停める。ドアを開けると、引き締まった空気が樹々の葉を揺らし、大きな空を駆け上がっていく。風が交差している。16世紀らしい大きな門の呼び鈴を押すと、長い道の向こうから、ゆっくりと近づく笑顔が見えた。彼女がディレクター Anne-marie Le vaillant(アンヌ=マリー・ル・ ヴェイヨン)だ。城までの長い道で、待ちかねたように言葉が連なる。「私たちのスクールは、全ての状況の子どもたちを受け入れ、平等な位置で、文化とアートを通して、子どもたちの成長を育むことを目的としています。私たちはタネをまき、水を与える。どんな花が咲くかがとても楽しみ。私はここで20年働いていますが、毎年違った魅力を持った、素晴らしい花を見ることができるのがとても幸せです。年間30人程のアーティストを迎え、さまざまなプログラムを子どもたちと行います。この場所を使ったアトリエの他、学校の授業の一環でも行う。常にアーティストとラ・スース・ガルーストのスタッフが協力して行う。それが、ラ・スース・ガルーストのやり方です。アトリエの費用は親の収入によって決まります。国の補助金も出ているので料金は抑えられています。」目を輝かせて語るアンヌ=マリーの熱にちょっと圧倒されたけれど、「授業が始まるまで、散歩してきて」という一言にほっとしながら、青空と雨上がりで少しぬかるむ庭園の道のコントラストの中に足を進めた。


16世紀、街の中心だった城の跡というだけあって、とにかく広い。丁寧に刈り込まれた一面の芝生、薔薇の迷路、その先の池には、水鳥が憩う。中世の優雅な時間に巻き戻るような錯覚。小高い丘の上にも建物がある。時代が違うので、建築様式もさまざま。見ているだけで楽しくなる。庭を巡るのにたっぷり30分はかかるが、歩く価値のある時間だ。
アトリエのある事務所に戻る頃には、授業の準備を終えたアンヌ=マリーがこの楽園の裏側を教えてくれた。

「ラ・スース・ガルーストは、30年前に、困難な状況にある子どもたちが自立性を身につけ、プロジェクトを実行し、自信を取り戻すのを助けるために、Élizabeth et Gérard Garouste(エリザベット&ジェラール ガルースト)夫妻によって創立されました。夫妻の言葉によれば、“私たちはアーティストとして、アートの実践が本当の転機となり得ることを知っています。子どもたちは、アーティストとの交流を通じて、自分の想像力を使うことを学びます。何かをつくることを学ぶことで、見ること、存在すること、自己を知ることを学ぶことができるのです。”私たちの役割は、困難な状況にある子どもたちに対して、寛容さ、アーティストとの交流による発見、好奇心など、前進するための鍵を提供し、解放と創造の場を用意すること。アートは子どもの心身のバランスを保つために必要不可欠なものなのです。子どもたちが自己を確立し、社会での自分の場所を見つけ、将来を考えることを支援します。今、私たちが生きている時代は、とても混乱していますが、社会的絆と教育は二つの重要な基盤なのです。多くの家族が経済的、あるいは社会的な困難に陥り、多くの子どもや若者が社会で自分の場所を見つける可能性に気づけずにいます。ラ・スース・ガルーストは、これからも彼らのためにあり続けたいと願っています」



穏やかな郊外の城に築かれた信念の砦。その強い決意は少なからず私たちの胸を打つ。そして、アトリエでの授業が始まった。今回はアーティストPierre Genouvrier(ピエール・ジェヌヴリエ)(画家、陶芸家 https://pierregenouvrier.com/)によるアトリエだ。ピエールは6ヶ月、ここに滞在し、ラ・スース・ガルーストのプロジェクトに携わる。アーティスト個人用のアトリエも準備され、終了時には個展も開催される。アーティストにとっての支援でもあり、学校が休みの水曜日に開かれる授業(毎週水曜開催3ヶ月間がワンクールのアトリエ)は両親にとっても有意義だ。何より、子どもたちの生き生きした顔、顔、顔。真剣な眼差しがあれば、笑顔が溢れたり、まあ、じっとしている子はいない。今回のアトリエのテーマは“架空の動物園の創造”。子どもたちはそれぞれ作りたい架空の動物をまずデッサンし、質感も考えながら徐々に具体的にし、名前もつける。それをアーティストやラ・スース・ガルーストのスタッフとともにオブジェに仕上げていくのだ。まず針金やダンボールなどで骨組みを作り、そこに紙と糊を混ぜた紙粘土で肉付けし、色をつけていく。架空の動物なのに、今にも動き出しそうだ。平面の絵から、子どもたちの手で立ち上がっていく造形にはエネルギーが溢れて、翼を持つものは飛び立ちそうな勢いだ。作品が、完成した際には、展覧会を開き(6月)、親たちや来場者を前に、自分の作ったオブジェのプレゼンテーションも行う。同時にアーティストの個展も開催される。ここは学校ではない。アートに良い悪いもない、自由に自分の思いを表現できる場所だ。アーティストと子どもたちのコミュニケーションから生まれる名前のない確かなもの。もちろん、アーティストも子どもたちからいろいろなものを学ぶ。そしてこの豊かな自然の中、歴史のある場所からもいろいろなアイデアが生まれてくる。前進ための鍵に形はない。ただ、子どもたちの眼差しの方向に光があれば良い。アートと社会の交差点は、どこに曲がっても、きっと未来に向かう道につながっている。










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