つくる人と飲む人、すべての人生を豊かにするために
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2024年12月27日パリでは毎日のように交通渋滞が発生する。
2021年からは歩行者の安全や騒音対策のために市内の制限速度が時速30kmとなり、環境負荷の高い自動車を減らしたいフランス政府の考えもあることから、渋滞が解消される見通しは今のところほぼないと言っていい。
そんな中で注目され始めたのが、パリを流れるセーヌ川を使った輸送だ。
2022年12月からパリ市内の商品配送を、水上輸送に切り替えたIKEA(イケア)に話を聞いた。
「とにかくCO2を出さない方向に事業を変えていこうというのが、イケアの考えです。もともと河川輸送は大量の荷物を一気に運ぶのに適していますから、拠点間輸送に利用している企業はほかにもありました。ですが、対個人への輸送にセーヌ川を用いたのは私たちが初です」
イケア フランスで河川輸送のプロジェクトを率いるエミリー・キャルペルスさんは、笑顔でそう語った。
かつてパリの繁栄を支えた水上輸送は、20世紀以降、その「遅さ」が問題視され、鉄道や自動車に輸送網の主役の座を譲った。ところが現在の交通渋滞と速度制限を踏まえると「遅さ」は問題ではなくなり、むしろ確実に指定時間に届けられるという利点へと変わったのだ。さらに、輸送の際に排出されるCO2がトラック輸送の1/5になるのだから、環境意識の高い企業が乗り気になるのもうなずける。
イケアはパリ市内の個人宅への配送を水上輸送にするため、商品を安定して運べるコンテナの開発、信頼できる物流業者の選定、川沿いの拠点づくりなど、綿密な準備を行った。そして、パリ郊外ジュヌヴリエ市の倉庫で商品を船に積み込み、セーヌ川を通ってパリ市内へ、パリ12区にあるベルシー河川港で商品をおろし、あとは電気自動車で顧客の家まで運ぶというシステムを構築した。自動車での輸送距離をできるだけ短くすることで、電気自動車でも対応可能(≒CO2排出がなく、渋滞にもつかまらない)となった。
「2025年には、パリだけでなくフランス国内すべての輸送を電気自動車にしていく計画です。加えて、パリのお客様へさらに短時間でお届けできるよう、新たな拠点づくりや物流網の効率化を図っていきます」とエミリーさん。
渋滞を避けお客様に早く商品を届けられ、市内の騒音やエネルギー問題を解消し、環境負荷も減らすことができる。イケアが期待を寄せるように、河川輸送は現代の物流課題を解決する糸口になり得る。そして、川のそばで発展した歴史を持つ都市は、パリに限らない。ロンドンのテムズ川、ニューヨークのハドソン川、そして東京の江戸川。新たな時代の輸送網は、再び水上へと広がっていく。
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2024年12月26日