フランスで進むサーキュラーエコノミー(2/2)

TeXT 2024年12月11日

※前記事:フランスで進むサーキュラーエコノミー(1/2)

La fondation de la mer(ラ・フォンダシオン・ド・ラ・メール)

海洋国家としてのフランスの使命 海を窒息させるプラスチックは、ゴミか資源か

つながり・連携で海を守る財団の活動

サーキュラーエコノミーにおいて、リサイクルはやはり重要な要素だ。資源を廃棄物とせずに価値ある原料として再利用できれば、経済的にも環境負荷低減の側面からも利益になる。

廃棄物の中でも近年特に重視されているのが、海洋プラスチックだ。廃棄されたプラスチックゴミの多くは、河川を通って最終的に海に行き着く。世界の海にはすでに合計で1億5,000万トン※3のプラスチックゴミが流れ込んでおり、さらに毎年800万トン以上※4が追加で流入していると言われている。

この課題をフランスではどのように捉え、対応しようとしているのか。海洋に関連するさまざまな課題に取り組んでいる海洋財団(La fondation de la mer)に話を聞いた。

総括責任者のアレクサンドル・ラシンさんは、地球全体に関わる深刻な問題であり、多くの組織や人とつながって解決していくことが重要だと語る。

「フランスは世界で二番目に広い海洋領域を持っており、この課題に対して大きな責任を負っています。世界規模のプラスチック汚染について私たちが議論するのは、当然のことです。今も、毎分19トンのプラスチックが海に投棄されています。これでも以前よりは少なくなったのですが、このまま何もしなければ2060年には海には魚よりも多くのプラスチックが存在することになると試算されていて、だからこそ私たちの財団は、政府や国際機関とともにこの課題に対応しています。他国との連携も積極的に行っており、欧州での海洋保護を中心にプログラムを設け、より大きな影響力を発揮できるよう取り組んでいます」

また、海洋保護部門の担当者でアップサイクルに関する支援を担当するミュリエル・バロンさんは、現在進んでいる具体的な活動として「Upcyclingプログラム」について教えてくれた。

「私たちとKRESK 4 OCEANS、Crédit Agricoleが共同で行っている Upcyclingプログラムは、プラスチックゴミを利用してアップサイクリングを考えている事業者に、資金援助を含むさまざまな支援を行うものです。事業者から提出されたプロジェクトを審査して支援先を決めるのが基本の流れですが、支援するか否かの選択基準はまず第一に社会的、地域的影響、プロジェクトに地域住民を巻き込むことができる可能性があるか、住民を団結させることができるか、ということ。私たちはプラスチックの回収やアップサイクルに関わるさまざまな団体への支援を通じて、人々の意識を高め、企業を変革していくことを目指しています」

海は依然として地球表面の70%以上を占めており、気候変動や生物多様性、プラスチック問題などの環境課題と直接的につながっているだけでなく、海洋資源や海運、海洋空間の活用など経済にも大きな影響力を持つ。サーキュラーエコノミーを考えるうえでも、重要なのだ。

※3 McKinsey & Company and Ocean Conservancy (2015)

※4 WORLD ECONOMIC FORUM(2016)


(左)Muriel Barron( ミュリエル・バロン)海洋保護部門責任者 
(右)Alexandre Laschine( アレクサンドル・ラシン)総括責任者

Friendly Frenchy (フレンドリー・フレンチー)

貝殻からつくるアイウェア
https://www.friendlyfrenchy.fr

海に関するゴミをリサイクルする、という観点でユニークな製品をつくる企業がある。貝殻からメガネフレームをつくりだすFriendly Frenchy(フレンドリー・フレンチー)だ。
フランスは貝類消費量が欧州で最も多い。それに伴って、ゴミとして出る貝殻の量も欧州一だ。フレンドリー・フレンチーはそのゴミに価値を付与し、ゴミではなく資源としてサーキュラーエコノミーに組み込もうとしている。
サンドリンヌ・ギヨ(Sandrine Guyot)さんとロラン・ベゼ(Laurent Pezé)さんがブランドを立ち上げたのは2016年。「海のものを原材料にするのだから、海で使うものを使いたかった」というのが、サングラスを含むメガネフレームづくりを始めたきっかけだった。原材料とする貝殻は、ノルマンディーにあるトルヴィル・シュル・メールの街の漁師やレストランから調達。帆立貝、牡蠣、ムール貝、アサリなど様々な種類の貝を用いて、植物オイルや木材セルロースなどを加えてフレームをつくっている。
フレームとツルの組み立て、仕上げの磨き作業まですべてフランス国内で行っているのも、フレンドリー・フレンチーの特徴だ。現在はさらに原材料の幅を広げ、新たに葡萄の種からつくったコレクションも展開している。
貝殻や葡萄の種と、フランスの食や風土を活かしたファッションアイテムづくりをするという、まさに「ART DE VIVRE FRANÇAIS !」※なブランドだ。
 
※フランスの生活様式。フレンチスタイル

Fil & Fab フィル&ファブ

漁網を資源に 漁師も企業も注目するエコロジー素材

学生グループのプロジェクトがつなげたリサイクルの輪

海洋に関する廃棄物やそのリサイクル・アップサイクルは、あらゆる人に関わりのある課題であるとはいえ、やはり海に近いところで暮らしている人々の方が、より身近に感じ、真剣に考えている。長い海岸線を持ち多くの港町を発展させてきたフランスでは、古くから漁業が盛んだ。だから「海に関わる人とは?」と尋ねられてまず漁師を連想する人も多いだろう。

漁師と海とプラスチック、と考えていくと、一つ課題になるものがある。漁網だ。

魚を取るために海に投げ入れ仕掛ける網は、今、ほとんどがプラスチックでできている。ところが漁網はリサイクルが難しく、産業廃棄物として廃棄されるばかりだった。

この課題を解決しようと行動を起こしたのが、Fil & Fab(フィル&ファブ)を創業したヤン・ルブタンさんと仲間たちだった。


Yann Louboutin( ヤン・ルブタン) 共同取締役

「初めて漁網がプラスチックゴミとして問題になっていると知ったのは、プロダクトのデザイン学校に通っていた時でした。学校の課題で地域の課題、特に海に関する課題解決のプロジェクトに取り組むことになったのですが、ある時、港に放置された古い漁網を見つけたんです。

これを有効活用して大きな価値を創出する仕組みをつくろうと思いました。その時のプロジェクトが今の事業につながっています」とヤンさん。

フィル&ファブでは、漁網を溶かしてペレットにする。このペレットをプラスチック原料として、時計やサーフボード、車、電化製品の部品をつくるのだ。特に大変なのは、さまざまなプラスチック素材が混じった漁網をしっかりと選別し、ポリアミド(ナイロン)100%のペレットをつくること。プラスチックと一口に言っても、ポリエステルやポリプロピレンなどの種類がある。品質の高いプラスチック原料をつくるには、選別をしっかりと行うことが欠かせない。

2019年に会社としてフィル&ファブを立ち上げて以来、ヤンさんたちは漁業関係者とプラスチック加工業者をつなぎ、検査や研究など専門知識・技術を持つ機関などの協力を受けながら時間をかけてリサイクルの仕組みをつくりあげた。今は、漁網の問題を解決したい漁業関係者と、環境に配慮したプラスチック原料を求める産業、その両者の架け橋となる存在を目指しているのだと言う。

「フィル&ファブのプラスチック原料を購入してくれるクライアントは、サーキュラーエコノミーへの貢献と、エコロジーな素材を使うことによるポジティブなパフォーマンスの両面を求めています。欧州ではさまざまな法律や規制ができていて、リサイクル素材への注目が高まっている。私たちの素材はそういう意味でも評価されています」

今後の課題は、さらに多くの顧客・新しいセクターを開拓し、販売数を拡大していくこと。フランス以外の国でもこのような活動が増えて、漁網リサイクルがプラスチック廃棄の課題に良い影響を及ぼすことを願っていると、ヤンさんは言う。

「フランスの漁業関係者は、漁網を海に捨てるようなことはずっと以前からしていません。きちんと船に乗せて港に持ち帰っていた。けれど、それを最終的には焼却することしかできなかった。せっかく苦労して持ち帰ったのだから、もっとポジティブな活用方法があった方が良い。リサイクルして新しい商品になることを、漁師の皆さんも喜んでくれています。リサイクルしたプラスチックでできたサングラスを漁の時にかけてくれたりと、応援してくれる。それがすごく嬉しいです」

サーキュラーエコノミーが変える未来

海で働く人々が豊かな海を守りたいと思い、そのために活動できることを喜んでいる。それと同じように、毎日の通勤で乗るバイクや、通りすがりに目にする街中の空間装飾でも、それらをつくり使うことで、地球の未来を守れると信じて取り組む人たちがいる。

サーキュラーエコノミーとは、そんな一人ひとりの努力と喜びが積み重なって巡っていくものなのだと、フランスのさまざまな場所でそれぞれのやり方で実践される実例に触れ話を聞く中で、感じることができた。

サーキュラーエコノミーがさらに世界中へ広がり、より大きな影響力をもって実践される時、人々が思い描く地球の未来は、今よりもきっと明るいものになるだろう。

New arrival

lorient(ロリアン)

ブルターニュに翻る光の旗。港町に差す、兆しの航跡を束ねて 世界が、強くざわめいている。暗く長いトンネルに立ちすくむ影と、光が導く少しの良い兆し。 コロナ禍で立ちすくんでいた場所から、私たちもそろそろ、動きださなければなら […]

2025年3月13日
Val-d'Oise(ヴァル=ドワーズ)

アートの社会の交差点から見えた未来。小さな森の、無限の楽園 そこに楽園があると聞き、パリ市内から車で1時間ほどの城跡を目指す。景色は郊外の風景に変わり、やがて緑の方が多くなってくる。その楽園は名をLa Source Ga […]

2025年2月25日
食を通じて子どもたちに“笑顔”を届ける

ベトナムの栄養・健康課題にアプローチする、森永乳業の幼稚園給食支援プログラム 近年、大きな経済発展を遂げているベトナム。右肩上がりに人口が増え、平均年齢は30代前半と若く女性の就業率が高いなど、世界でも高い成長力を示して […]

2025年2月25日
大商人になるために、悪代官へのプレゼント“山吹色のお菓子”は必要か?

「越後屋、そちも悪よのう」 のセリフでお馴染み。 悪代官にワイロを贈る悪徳商人は、時代劇の定番キャラクターです。 金の小判を“山吹色のお菓子”と表現するような悪徳商人が、本当にいたのどうかはわかりませんが、実際のところ商 […]

2025年1月31日