HOME > 欧州CSR情勢 > マークス&スペンサーが実践するサステナビリティ

小売業界で先進的にサステナビリティに取り組む企業として名高い、マークス&スペンサー。
その活動は、実際にはどのような考えのもと、どのように行われているのかを掘り下げるべく、取材を行いました。

取材・執筆:Sustainavision Ltd. 代表取締役 下田屋毅氏 / 店舗取材:2013年12月10日

マークス&スペンサー(M&S)とは?

マークス&スペンサー(M&S)は、125年を超す歴史を持つ英国の老舗のスーパーマーケットである。
M&Sは、英国内はもちろん約48カ国にフランチャイズ店を含めて700店舗以上を展開する。従業員数は英国・海外合わせて約8万人に上る。

“Plan A Because there is no Plan B”

M&SのCSR戦略として2007年に立ち上げられたのが「プランA」である。この中で同社は、100のコミットメント(約束)を、5年間で達成することをステークホルダーに提示した。現在は世界で最も持続可能なスーパーマーケットとなるという究極の目標を設定とともに、コミットメントを180に拡大、2015年までに達成するとしている。

また、プランAは、「Plan A Because there is no Plan B(プランA、プランB(代替案)はありません)」というキャッチフレーズとともに、プランAの本気度をステークホルダーに伝えている。

プランAは次の7つの柱から成り立っており、これらの柱の下に、20の大きな目標と180のコミットメントが設定されている。
(7つの各柱の下の説明は、活動の主要項目)

1. 我々の顧客をプランAに巻き込む
・5百万人の顧客がプランAの活動に参加
・衣服などのリサイクル品の回収により、1千1百万着、8百万ポンド(約13億6千万円)を国際NGOオックスファムに寄付
・顧客と従業員からのチャリティへの寄付額2千万ポンド(34億円)

2. プランAをつくる〜どのように私たちはビジネスをしていくのか
・プランAが産出した純利益、1億3千5百万ポンド(約229億5千万円)をビジネスに再投資。
・エネルギーモニター(38,000個)を従業員に配布
・5,000人がマークス&スタート・ワーク経験プログラムに参加

3. 気候変動
・M&Sの店舗、事務所、倉庫、配送から、80万トンの二酸化炭素の排出を削減
・エネルギー効率向上31%
・M&Sの英国とアイルランドの全店舗、事務所、倉庫、配送に関わるカーボンニュートラルを実施

4. 廃棄物
・M&Sの店舗、事務所、倉庫、店舗建設現場からの廃棄物の埋立処理物ゼロ(2012年2月より)
・レジ袋17億枚の削減
・製品パッケージの26%の削減

5. 天然資源
・M&Sの店舗、事務所、倉庫の水の使用を27%削減
・魚介類をMSCなどの持続可能な漁場からの購入100%
・木材製品におけるFSCなどの持続可能な森林認証品の使用88%

6. フェアパートナー
・サプライヤーに対するトレーニング24万4千人
・酪農家に対する動物の健康と福祉についての賞の立ち上げ
・2012年のサプライヤーカンファレンスに1,200人が参加

7. 健康と福祉
・M&Sの食品と飲料において人工着色料、化学調味料の不使用(2008年8月1日より)
・健康食品ブランドにおいて英国第2位
・より健康な牛乳(飽和脂肪を6%削減)の取り扱い


M&Sは、このプランAを達成するために、ステークホルダーとの対話を重視している。7つの柱の1つ目の「我々の顧客をプランAに巻き込む」に代表されるように、このコミットメントを達成する為に顧客や従業員、NGOなどステークホルダーへ伝え、協働によりプランAを実現していくことを明言している。

2013年版プランAレポートによると、マークス&スペンサーは既に180個のコミットメントのうち139個を達成、31個が計画どおり進んでおり、5個が計画より遅れ、4個が未達成、1個がキャンセルという状況である。コミットメントをしたものをしっかりと自己評価し、達成できたものや、自社の都合の良いものだけを報告するのではなく、プランAが計画どおり進んでいるもの、達成できていないもの、キャンセルについてはっきりとステークホルダーへ報告している。

M&Sでは、プランAに関する社内レポートを月1回発行、プランAが社内でどのように機能しているかをマネジメントに知らせている。プランAが2012/13期で、産出した純利益は、1億3千5百万ポンド(約229億5千万円)。


プランAの従業員研修の徹底

ストラットフォードシティ・サステナブル・ストアを訪問した際に感じたことは、プランAの教育が従業員へ徹底されていることで、従業員の日々の活動にプランAが統合されていたことである。
店舗の新入社員は、最初の4週間は、プランAのトレーニングプログラムを受ける、そして、その後5か月間のOJTを経て、プランAを理解した認定を受ける。プランAのアップデートは、イントラネットでセルフスタディをするとともに、店舗のスタッフはマネジャーからアップデートについて直接指導を受ける。
プランAポケットガイドはスタッフ全員に配布されスタッフが実施するべき10項目が記載されている。