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グラミンユニクロ:
独自のSPAモデルを活用し、バングラデシュの未来を
良い方向へ変えていく

ファーストリテイリングは、中核ビジネスのユニクロで培った生産ノウハウや店舗運営、人財育成などのリソースを投入し、生産拠点の1つバングラデシュでソーシャルビジネスを展開。服の企画、生産、販売までをバングラデシュ国内で行い、収益を再投資し、社会課題改善を目指しています。(2016/12/26 更新)(SUSTAINABLE BRANDS掲載記事

高品質な服の企画・生産・販売のすべてをバングラデシュ国内で完結


堅調な経済成長を続けるバングラデシュ。同国が世界最貧国と呼ばれたのは過去の話であり、現在では、世界有数のアパレル生産国、新興経済国となっている。ただ経済は、縫製品の輸出や、海外移住者・労働者からの送金に依存するところが大きく、構造的に脆弱であり、国内における産業基盤の強化、インフラ整備が依然として課題となっている。

こうしたなか、株式会社ファーストリテイリングは、2010年にソーシャルビジネスを行う新会社、UNIQLO Social Business Bangladesh Ltd.を設立。2011年には、ソーシャルビジネスの提唱者・グラミン銀行グループとともに、合弁会社GRAMEEN UNIQLO Ltd.(グラミンユニクロ)を設立し、同社の生産拠点の1つであるバングラデシュにおいて、独自のSPAモデルを通じたソーシャルビジネスを展開している。

このビジネスでは、服の企画、生産、販売をバングラデシュ国内で行い、収益はすべて再投資される。生産ノウハウや店舗運営、人材育成など、グローバル企業であるファーストリテイリングのリソースを投入し、事業を拡大していくことで、成長過程にある同国の小売業に新たな市場を創造。貧困の撲滅や産業の発展、雇用拡大、人々の自立といった、社会課題改善を目指している。

そして、開始から約6年。現地ならではの商習慣、文化、法令、工場などについての社会性にまで配慮した調達基準など、さまざまな課題と直面しながらも、ソーシャルビジネスの理念を共有する工場の開拓、伝統服など現地のニーズにこたえる商品開発、店舗開発戦略の見直しなど、試行錯誤を重ねながら、事業拡大を推進してきた。

ソーシャルビジネスを真に持続可能な事業として確立するために


2015年、ナズムル ホック氏がグラミンユニクロのCOOに着任し、事業方針として、3つのミッションが明文化。グラミンユニクロのビジネスは新たなステージに入った。

①バングラデシュすべての人々に、服を着る喜び、幸せ、満足を提供する

企画から生産、販売まで、すべてバングラデシュ国内で行う。高品質で快適な服を、現地の人々が購入しやすい価格で提供する。

②ビジネスを通じてバングラデシュの社会課題を解決する

グローバルに活躍できる人材をバングラデシュ国内で育成することを目指す。あらゆる差別のない労働環境を構築し、すべての従業員に平等なチャンスを与え、公正に評価する。また生産工場をはじめとするすべての取引先に対しても、コンプライアンスを遵守した労働環境を要求する。

③収益はすべてソーシャルビジネスに再投資する

再投資により、事業を拡大し、社会課題解決や、人々の暮らし改善につなげる。

現在、グラミンユニクロの店舗は9店舗あり、今後も数店舗をオープンさせる予定だ。さらにeコマースも検討している。バングラデシュ国内での知名度は向上し、他ブランドにはない機能性商品への関心はもちろん、入社希望者の増加など、企業としての評価も高まっている。ただホック氏によると、持続可能なビジネスとして確立させていくためには、引き続き、工場開拓と店舗拡大が必須であるという。特に工場開拓については、グラミンユニクロのCSR基準に合致する工場が少なく、お客様のニーズにこたえるだけの生産体制が整っていない状況だと話す。

「グラミンユニクロの服は、適正な労働環境など、私たちのCSR基準を満たしているパートナー工場でつくられています。ただ、国内向けの製品を生産している工場では、このCSR基準を満たす工場は本当に少ないのです。特にウイメンズの商品は、人気の高まりに反して生産体制がまったく追いついていません。そこで、既存の工場を当たるだけではなく、ソーシャルビジネスの理念に共感いただけるパートナーと協働し、ゼロから工場を立ち上げることも始めています。先日、工場用地を購入する段階からパートナーと協働した、新工場の建物が完成しました。今後、機器や設備を設置し、改めてグラミンユニクロのCSR基準に合致しているか監査を行った上で、稼働開始となります」

店舗拡大については、現地では珍しくないという出店候補地のコンプライアンス違反により、断念せざるを得ないケースも多いという。 「出店先を決定する際には、建物の構造に問題がないか、違法性がないかなどを精査します。すると、政府の許可を得ていなかったり、3階建ての許可で5階建てが建設されているなどの問題が発覚し、どんどん候補地が減ってしまう。近々オープンさせたいと考えている新店舗についても、最初は200近くの候補地があったのですが、コンプライアンス違反の物件を外していくと、最終的な候補地は10カ所程度に。そのなかから最適な場所を選びました。今後は、さらなる大型店舗や、ダッカ以外の場所への出店も進めていきたいと思っていますが、まずは、新店舗を成功させることが重要だと考えています。店舗拡大についても、生産体制についても、課題はまだありますが、講じるべき解決策は見えており、それに向かって着実に歩みを進めていこう、という段階です」(ホック氏)

ソーシャルビジネスを、真に持続可能な事業として確立すべく挑み続けるグラミンユニクロ。国内産業の基盤醸成が急がれるバングラデシュにおいて、同社の挑戦は、先進的なグッドプラクティスを築いていくだろう。

お話を伺った方

GRAMEEN UNIQLO Ltd.
COO
Najmul Huq(ナズムル ホック)