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ガーナ栄養改善プロジェクト:
味の素が様々なセクターとともに実現する、持続可能なソーシャルビジネス

味の素グループが100年に渡って積み重ねてきた、食品やアミノ酸についての知見を、開発途上国の栄養不足改善に活用。健康基盤を築く「人生最初の1,000日」に着目し、ガーナでは、離乳食の栄養バランスを強化するアミノ酸入りのサプリメント「KOKO Plus™」の開発・製造・販売を進めています。(2016/10/14 更新)(SUSTAINABLE BRANDS掲載記事

「人生最初の1,000日」の重要性に着目し、子どもたちの健康基盤を築く


2009年、味の素(株)が100周年記念事業としてスタートさせたのが「ガーナ栄養改善プロジェクト」である。開発途上国の栄養不足の問題の中で、味の素(株)が特に注目したのが「人生最初の1,000日」の栄養である。母親の妊娠時から子どもが2歳の誕生日を迎えるまでの約3年間に栄養が不足し成長不良が引き起こされると、その後の人生で取り戻すことが難しいと言われているものだ。

特に、ガーナの伝統的な離乳食であるコーンのお粥「koko」は、エネルギーやタンパク質、微量栄養素が不足している。そこで味の素(株)は、この離乳食の不足栄養素を補うことで、子どもたちの将来にわたる健康の基盤を築こうと考えた。そして、離乳食の栄養バランスを強化するアミノ酸入りのサプリメント「KOKO Plus™」の開発・製造・販売を開始した。

開発途上国には特有の課題が数多く存在し、企業1社のみでプロジェクトを推進することは困難である。そこで「ガーナ栄養改善プロジェクト」では、マルチステークホルダー連携によるソーシャルビジネスを目指して活動を続けてきた。

地元の政策やルール、ニーズに合致した活動を行うために、プロジェクト初期からガーナ政府やガーナ大学と協働してきた。製品化にあたっては、オランダのDSM社と専門的知識やノウハウを共有するとともに、ガーナのYedent社が「KOKO Plus™」実際の製造を担ってきた。さらに販売においては、現地女性の自立支援プログラムを実施しているCARE等の国際NGOと連携。Last Mile Deliveryを確立するために、各村で女性販売員が製品を販売するという革新的な流通方法を編み出した。

本プロジェクトは3段階のフェーズで進められている。2009〜2011年のフェーズ1では、市場調査と製品開発、生産体制の確立を目指してきた。2011年以降のフェーズ2では、製造工場を立ち上げて生産を開始。また、2013年2月から2015年3月まで、製品の栄養効果試験を約40コミュニティ、約1,000名を対象として行った。その結果、離乳期の子どもの栄養改善(低身長・貧血の予防)には、微量栄養素の強化だけでなく、タンパク/アミノ酸と微量栄養素を組み合わせた「KOKO Plus」が最も有効であることが明らかとなった。

このように高い効果が認められる「KOKO Plus」だが、栄養サプリメントの販売には難しさが伴う。通常の食品とは異なり、栄養サプリメントはユーザーが「栄養とは何か」を理解し、納得した上で、使用し製品の効果を実感してもらうというプロセスで根付いていくためだ。

そこで本プロジェクトでは、1年間の流通試験を行った。ガーナ北部貧困地域では、CAREの主導で、各コミュニティで栄養教育や調理講習会等のイベントを行いながら、女性販売員が対面販売活動を実施した。一方、ガーナ南部商業地域では、ガーナ保険省の施設などで栄養教育と連携したプロモーションを実施するとともに、ラジオ広告等で製品認知・理解獲得を進めた。この結果、試験開始1年後の「KOKO Plus」継続使用率は、北部貧困地域で62%、南部商業地域で11%となり、各地域の実情に合わせたアプローチを継続的に行う必要があることが明らかとなった。

現在、本プロジェクトはフェーズ3に移行しており、本格的な生産・販売の準備を進めている。販売エリアの拡大や、ターゲットとする乳幼児の数および使用頻度の拡大を目指すとともに、「KOKO Plus」と同じチャネルを活用できる母親向けの製品の導入も検討されている。味の素(株)は、ガーナ国内で持続可能なビジネスモデルを構築したうえで、将来的には他国への展開も視野に入れているという。

栄養に関する課題は、国連持続可能な開発目標(SDGs)や、WHOのGlobal Nutrition Targets 2025など、世界規模の動きがこれまで以上に強まっている。その中で、ビジネスセクターに対する期待も高まりつつある。

味の素(株)は、栄養改善を目指す世界的なムーブメントであるScaling Up Nutrition (SUN)に参画。さらに日本国内では「栄養改善のための国際官民連携プラットフォーム」に主要メンバーとして参画し、ガーナ栄養改善プロジェクトの経験を広く活用することを目指している。企業が積み重ねてきた知見や技術を、パートナーシップの中で共有するとともに、ビジネスを通じて広く社会へ展開することで課題解決を目指す。味の素(株)の活動は、その好事例のひとつと言えるだろう。