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世界最大級のヘルス&ウェルネス企業誕生から2年
活動の統合と推進、広がる可能性

アメリカとヨーロッパ、異なるバックグラウンドで、それぞれが100年以上の歴史を誇り、アイコニックなドラッグストアブランドを築いてきた、ウォルグリーンと、ブーツ・アライアンス。合併により、世界最大のドラッグストアチェーンかつ、世界一の医薬品物流ネットワークを有する医薬品卸となったウォルグリーン・ブーツ・アライアンスが、今進めているサステナビリティとは?同社のシニア CSR コミュニケーション マネジャー、アリス・スーリエ氏にインタビューを行いました。(2017/06/20更新)

世界25カ国に広がるウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの事業とCSR


ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの事業概要について教えてください。

ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(以下WBA)は、店舗での医薬品販売、国際的なネットワークによる医薬品販売、医薬品卸の3つの事業部門を有し、世界25カ国でビジネスを展開しています。欧米を中心に約13,200店のドラッグストアを保有する一方、390カ所以上の医薬品配送センターを通じて、およそ20カ国の薬局などに商品を供給しています。商品の供給先は、自社の店舗だけではなく、他社の店舗や医療機関も含みます。従業員数は40万人以上。医薬品ビジネスを網羅する3つの事業を全て行っているのがWBAであり、この網羅性と規模こそが、私たちの強みであると同時に、責任の大きさでもあると認識しています。

CSRのフレームワーク、目標の決定・浸透はどのように進められていますか?

WBAのコーポレートビジョンは、「世界中の人々と地域社会をケアし、医薬品、健康、美容において、世界でもっとも選ばれる企業となる」です。このビジョンの下、(1)コミュニティ、(2)環境、(3)市場、(4)ワークプレイスを、CSRの4つの重点分野とし、それぞれに戦略と目標を設定しています。下記は目標設定と活動推進のスキームです。

(A)WBA本社:最終的な到達点を決定
(B)各事業部:各事業部、あるいは事業部横断の短期目標を決定
(C)各地域の拠点:各従業員が実行、結果を評価
(D)レビュー・コミュニケーション:結果をレビューし、
   CSRレポート等を通じて情報開示
(E)ステークホルダー:社会からの意見も積極的に取り入れ、
   活動改善を図っていく

本社や事業部のリーダーが目標を設定しローカルに落とし込んでいく、トップダウンが基本です。日本では、トップの理解が得られず苦労されている企業もあると伺いましたが、当社に限らず、CSR活動を推進していく上では、トップのリーダーシップが何よりも重要だと思います。経営層がCSR戦略の必要性を理解し、コミットしてくれたら、従業員は強いインスピレーションを与えられ、全社一体となって目標達成に向けて進んでいけるでしょう。

前述の4つの重点分野(コミュニティ・環境・市場・ワークプレイス)について、目標と具体的な活動例を教えてください。

(1)コミュニティ
目標:
・事業を展開するすべての地域において、人々の心身の健康を支援・ガンの研究、治療、予防に関するパートナーシップの構築
・世界中の若者、子供達の支援
事例:Get a Shot. Give a Shot.
「予防接種を受けて、予防接種を届けよう」。アメリカでは、薬剤師による予防接種の実施が認められており、ウォルグリーンで各種予防接種が行われる度に、国連財団のワクチン接種推進キャンペーン「Shot@life」に寄付が行われ、発展途上国の子供たちにワクチンが届けられる。「Get a Shot. Give a Shot.」を通じたワクチン提供は、1500万件にのぼる。ウォルグリーンを支持する消費者のうち約12パーセントが、その理由に同取り組みを上げるほど、認知度が高い。

(2)環境
目標:
・省エネルギー、温室効果ガス排出削減
・リユース、リサイクルの促進による廃棄物の削減
・森林破壊実質ゼロ
事例:配送センターにおけるゼロエミッション
2016年、物流センターにおける埋立て廃棄物ゼロに向けたパイロットプロジェクトを開始。社外のパートナーとともに実現を目指す。

(3)市場
目標:
・製品の透明性とトレーサビリティの実現
・グローバルネットワークと協働し、幅広い社会課題にコミット
・サプライチェーンにおける人権の配慮、エシカルソーシングの実現
事例:サプライヤーへのトレーニングの実施
一次サプライヤーはもちろん、可能な限り二次、三次サプライヤーまで行うことを目指す。
事例:綿棒の素材変更
芯がプラスチック製の綿棒をトイレに流す人が多いとの指摘を受け、注意喚起をパッケージにプリントするも、効果が得られず、芯の素材をコットンに変更。

(4)ワークプレイス
目標:
・従業員の心身の健康
・相違点を認識、尊重する文化の促進、従業員への平等な機会の提供
・労働安全衛生
事例:「働きやすい職場」として各種アワードを受賞
2017年、ウォルグリーンは、企業平等指標においてLGBTへの理解が進んでいる点が評価され、働きやすい職場に関するアワードで一位を受賞。

100年以上の歴史を誇る老舗ブランドが合併。CSR面での融合と浸透、情報発信について


ともに100年以上の長い歴史を持つウォルグリーンと、アライアンス・ブーツが合併し、CSRの面では、
 どのようにして融合し、共通理念を浸透させていったのでしょうか。

ブーツUKは、WBAとなる以前、アライアンス・ブーツの時代から、15年に渡ってCSR活動に取り組んできました。ブーツUKは事業を取り巻く様々な社会課題を網羅する戦略を立てた上で、各活動を推進し、各種データを蓄積、CSRレポートも毎年発行していました。一方ウォルグリーンでも、「Get a Shot. Give a Shot.」のように評価の高い活動を展開していました。そして合併後は、ブーツUKの包括的なCSRのフレームワークを踏襲。WBA全体に適用することとし、その下で、昨年も様々な活動が実施されました。これは、各事業部門がWBAの一員としてビジョンを共有し、CSR活動の推進に誇りを感じてくれた結果だと思っています。現在では、WBAとして、あらゆる側面を網羅する全社的な戦略の下、体系的に活動を促進し、公正なレビュー、迅速な情報開示を図っています。

1つの会社としてビジョンを共有することはもちろん重要ですが、それぞれがこれまで築いてきたものを壊し、全てを統合する、というわけではありません。ウォルグリーンはアメリカで、ブーツはヨーロッパで、それぞれ高い認知度、ブランド力を有しています。ですから合併後も、ブランドは独立させたまま、CSR活動についても、同じビジョンを共有しながら具体的な活動については、良い活動をお互いに取り入れるスタンスで推進しています。
WBAの CSRへのコミットメントは、持続可能かつ収益性の高い事業活動に組み込まれています。

2016年度(会計年度)には、WBA創業後初めて、慈善事業への寄付、CO2排出量、エネルギー使用量、廃棄物処理量、従業員の定着率、従業員のジェンダーに関する数値など、事業をとりまく全てのデータを収集しました。今回収集したデータをベースラインとして、今後の進捗状況を測定していきます。
2016年2月、合併後2回目となるCSRレポートを発行しました。ウォルグリーンとアライアンス・ブーツ、それぞれの活動報告が中心だった2015年版と比べて、2016年版では、WBAの報告書の基盤が構築できたと自負しています。

SDGsについては、どのように取り組んでいますか?

2016年の報告書では、CSRの目標を「持続可能な開発目標(SDGs)」にマッピングしました。私たちは、活動の進捗にもSDGsを活用していきます。このようなSDGsへの強いコミットメントが評価され、2016年には、国連財団のグローバルリーダーシップアワードを受賞しました。

各目標は、SDGsの少なくとも一つ以上の項目と結びついています。それを表明するために、下記のように分かりやすくマッピングし、社内外に公開しています。

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私たちのSDGsへの取り組みは、まだ始まったばかりです。2016年は、従業員への浸透を図るフェーズでした。例えば月1回のSDGsの教育プログラムを、昨年より開始しました。

他社と比べて、WBAの姿勢、取り組みには、どのような特徴があると思われますか?

私達のCSR活動の特徴は、次の4つの点に集約されます。第一に、柔軟なフレームワークを持っていることです。このフレームワークを活用して、トップが決めた全社としての戦略や目標を、事業ごと、国ごとの具体的な活動に、落とし込んでいくことができます。

2つ目に、ステークホルダーとの建設的なダイアログを日々実施している点です。ステークホルダーからの改善の要望については、重要であるか否かに関わらず、まずは何が問題であるかを理解し、次に今ある状況を改善するために何ができるかを検討します。そして導き出した解決策について最終的な承認が得られたら、可能な限り早急に声明を発表し、誠実な姿勢を示します。

3つ目は、活動そのものの特徴です。どのような活動を選び注力しているのか、質問を受けることがあるのですが、私たちは、ビジネスに戦略的につながりのある活動に注力し、そこに蓄積してきた知識や経験を投入しています。

そして最後の4つ目は、データの収集方法です。各活動の成果や実績を図るため、また正確性と一貫性を担保するために、財務部がCSR部と協働でデータを収集しているのも、WBAの特徴だと思います。